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晩秋の海月

お天気がいいのでドライブの途中
山並に隠された小さな九十九折りを巡って
小さな漁港に降りました。

絶壁を白い野地菊と黄色いつわ蕗の花が覆って
告別式の祭壇のようです。
小さな白い漁船を係留した漁港は
街から遠くないのに山が隔てているので
とても水が綺麗です。
というよりこれまで港は数々見ましたが、
水がこれほど澄み切って
底まで見えている漁港なんて初めてです。
透き通った緑の水の中にいろんな形の
透き通った白い海月(クラゲ)がいます。

停泊している漁船の作る影で
碧緑のネオンのような光を明滅させている
やや大きい海月がいます。
昼間の水面で泳いでいるクラゲの発光を見たのも初めて。
もっと光ってみせてくれればいいのに
発光海月は明るい陽の射す水のほうに漂い出て
淡いネオン光は見えなくなってしまいました。

水色の空にクラゲのようにたよりなく白い
海月ではなく本物の月が浮かんでいます。(ナルシア/2001)
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by wintersavory | 2005-11-23 12:15 |

バー・オブ・バー

都会の地下にある古いバーで、カクテルを飲みました。

路地の扉を開けて階段を降りたら、すぐ店内です。
やはりカウンターには座れません。
私は一杯がせいいっぱいで、
ゆっくりゆっくり流し込みながら、
作家や編集者たちが集ったという
薄暗いバーを、背中で見ていました。
それでもやっぱり酔いは回ってしまいます。

くすんだ壁、低い天井、古いテーブル。

止まり木の下のフットレストは、
数え切れない靴を乗せてきたおかげで、
すり切れそうになっています。

女性客は少なくて、やはり黒いスーツの
男性が目立つカウンター席。
私たちはどこから見ても観光客でしょう。
黒い服を着てきたことだけが気休めです。
お客さんの入れ替わりも少ないのか、
1時間ほどの間に、
1組のお客が入ってきただけで、
出た人はいませんでした。
皆、なにやら話し込んでいます。

そういえば、地元にもこんなような
カクテルバーがあります。
もしかすると日本中にこのバーの子孫が
あるのかもしれません。

お店の人たちも、きっと長いのでしょう。
この店と同じほどではないとしても、
幾多の客たちにとって、
店の思い出であり続けているはず。

久しぶりのカクテルは
ほろ苦く、
ライムの香りを強く発していました。(マーズ)
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by wintersavory | 2005-11-15 20:58 |

『ピエタ -pieta-』

* 愛や恋だけではなくて・・・。

ぱっとしない気分の時、
“明るく甘いHappyEnd”を求めてマンガを買うことがあります。
あるいは、夜更かしの友である「ミステリ」に、
気に入ったものが見当たらない時。
いい大人がマンガを買うのも、
どうかと思う人もいるでしょうが。
私は恥ずかしいとは思わないのですが、
非常につまらない物を買ってしまった時、
とても哀しく、落ち込んでしまうことはあります。
時間とお金の無駄遣いだと。
なのに、いろいろな空白をお手軽に埋めようとして、
ついつい、衝動買いをしてしまうのです。

「ピエタ」は、買うまでに随分と迷いました。
「あたり」か「はずれ」かというシンプルなものさしで測れば、
多分、「あたり」だということはわかっていたのですが。
ただ、慢性的な精神疲労に効きそうな
“明るく甘いHappyEnd”ではなさそうで。

愛とか恋とかの話ではなく、
心に痛みを抱える少女たちの癒しの物語。
淡々と描かれる悲しみや苦しみ、再生への鼓動。
透明で脆い、少女の時間。

今ではもう、遠い彼方に見え隠れしている少女時代の、
切なさを思い出します。
誰とも分かち合えないと思った悲しみ。
とても小さく思えた自分の存在。
そんな少女も、たくましく成長して、
今は、マンガの中の少女たちに、
「気持ちはわかるけど、それでいいの?」と
少女たちの幸福に現実的な「?」を
投げかけたりしているのです。

そして、
マンガの中の彼女たちのその後を
ぜひ知りたいと思うのです。(シィアル)


『ピエタ -pieta-』
著者:榛野なな恵
出版社:集英社(ヤングユー・コミックス)
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by wintersavory | 2005-11-09 22:20 | 本*

本を探して

読書の秋、だからでしょうか。
突如、加速度的に買いそびれた本への想いが
つのりにつのり、
私にしては珍しい行動力で、
本を探して、西へ東へと、車を走らせました。
仕事を終えて、星空の下。
秋の夜の透明な美しさにも目もくれず。
土曜の昼下がり。
真っ青に晴れ渡った空はどこまでも高く。
・・・きれいなのだろうなあと、肌では感じながらも、
目はひたと、見えるはずもない遠くの古書店を
見据えたままで。

このエネルギーはどこから湧き上がってくるのだろうと、
自分ながら感心します。
目指す古書店が近づいてくると、
獲物を待つハンターのように、どきどきしてきます。
ここで、何か一冊でも探している本に巡り会えるだろうか。
このリストの少しでも、片づくといいのに。
たかだか本のことで、どきどき、はらはら。

最近、すっかり「おうち」派になっていたので、
こうやって、車で遠くまで出かけるのは久々でした。
家路を急ぐ車を縫うように、
あるいは、行楽の車の間を滑るように。
略地図を見ながら、ずっと向こうの街まで。
小さな旅には、それなりの収穫もありました。

郊外を走り抜ける喜び。
秋に染まっていく町並みの美しさ。
思いもかけず懐かしい街を通った驚き。
ドキドキ迷子の困惑と冒険気分。

もちろん、探していた本も、少しは見つかったし。

――静かな秋の夜。
本格的に、読書の秋です。
猫を膝に抱きながら、
やっと、再開した大切な本をこれから開きます。(シィアル)
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by wintersavory | 2005-11-08 19:44 | 本*

コーリング・LONDON

いまごろの季節になると、
無性にロンドンがなつかしく思えます。
ちょっと透明な風や薄くなった空気に、こころが
反応してつかまってしまうように。

住んだわけでもない、
ただ何度か旅をしただけなのに。
いえ、初めての旅から帰って以来、ずっとなのです。

あの空気。
街のにおい。
ただそれだけが。

言葉もとうてい満足に話せない、
何があったわけではないけれど、
このなつかしさは理屈ではないようなのです。

ある年はその誘惑に負けて、数年ぶりに
ぱーっと飛び立ち、秋深いLONDONへ行ってしまいました。

夏とはちがって、普段の顔のロンドンって
こんななんだなぁと思いました。

ロンドンのカフェばかりを集めた
おしゃれな写真集を見ていると、
こういうお店には、行ったことがないのよね、と
ためいきが出ます。

わたしたちがドアをくぐれるのは、
親しみやすいイタリアンレストランだったり、
スーパーマーケットやテイクアウトのお店だったり。
夕食のほとんどは、ホテルの部屋で持ち帰ったものを
それなりに楽しく食べる程度です。
観劇で遅くなっても、まっすぐホテルへ帰ります。
お酒が苦手なのもあって、夜の街にくりだそう、
なんてこともまずないし、そんなことを言い出すと、
何がたのしくて行くんだろうと思われそう。

地球のうらがわに、
そんな街があるっていうのも、いいものです。(マーズ)
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by wintersavory | 2005-11-07 22:17 |

美術ミステリ

『偽りの名画』 著:アーロン・エルキンズ / 訳:秋津知子 / ミステリアス・プレス

7月にサザビーズで、ルーベンスの宗教画が世界史上3位の
落札価格を記録しました。
ルーベンス?それって「何パーセントのルーベンス?」(笑)
現実に起きた事件の迫力にはどうしても負けてしまいますが、
贋作美術品を巡るミステリは、他の犯罪ものにはない軽みと
華麗さがあって人気があります。
『偽りの名画』 は人気シリーズ「スケルトン探偵」の作者アーロン・
エルキンズによる、美術館キュレーターが主人公の美術ミステリ。


… コレクションの中の贋作を探せ …

え、このティツィアーノ?それともこっちのルーベンス?
いやいや絶対このフェルメール!でもその証拠は?
定評のある軽妙な語りはこちらも冴えていて、クラナッハの描く
ような美女を見た途端、巨匠に対する評価が跳ね上がる場面など
大笑い。
確かにねー、絵で見るとどこが良いのかわからない体型ですよね。
味のある脇役、丁寧な専門知識、もれなくついてるサスペンス、
フィレンツェやベルヒテスガーデンへの楽しい観光とさりげなくて
美味しい食事などなど、ディープじゃないけど感じの良いサービスも満点。


ところで、主人公が贋作調査のためにロンドンの図書館のファイルを
総ざらいする場面があるんですが、
これって『クローディアの秘密』で11歳のクローディアがやったの
と同じですね。(ナルシア)
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by wintersavory | 2005-11-06 23:04 | 本*

本のなかの、あのお店。(4)

● 何でも屋さんの誘惑。

何でも売っている何でも屋さん、しかも主は猫。そんなお店が
「ねこじゃら商店」(富安陽子著)です。白菊丸という猫が経営し
ているこの店は、神出鬼没。町のどこかの路地の奥、必要なものを
探しているお客さんの足が向いた方角に、開店しているのです。何
でもあるわりに、「在庫切れですので明日までには」などといって、
お客の無理難題に対応したりしています。さんざんな目にあうお客
も、ときにはいるのですが。探し物は、川に流した柳の枝だったり、
のっぺらぼうの顔だったりと、ねこじゃら商店は大忙し。

ファンタジックながらくた屋さんというと、「完全版風街物語」
(井辻朱美著)の「フィガロの店」、なかなか通好みです。本業は
標本屋のフィガロが、4週間でモササウルスの骨を探すあたり、ねこ
じゃら商店の白菊丸といい勝負かも。フィガロはタキシードを着込
んだ洒落者で、蝶ネクタイがときどきトンボになったりします。

本のなかにある店は、それにしても魅力的です。移転することも
閉店することもなく、一度知ってしまうと、一生もののお店もたく
さんあります。そんななかでも、何でも屋さんにあこがれるのは、
手品のようにあれこれを取り出してみせる主人へのあこがれでしょ
うか。そんながらくた屋さんの店の奥に座って、迷い多きお客人が
扉をあけるのを、日がな一日眺めているのは、なんとぜいたくな
ことでしょうか。(マーズ)
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by wintersavory | 2005-11-05 20:54 | 本*

本のなかの、あのお店。(3)

● 避難所のようなお店。

最近とても惹かれるのは、「屋根裏部屋のエンジェルさん」(ダイ
アナ・ヘンドリー著)に出てきた、『家なき子と家なき大人の店』と
いうカフェです。ここは、エンジェルさん(職業は秘密。電気関係)
みたいな人と一緒でないと、見つからないお店のようです。家のない
(居場所のない)子どもだけでなく、よるべない大人にも開かれたお
店というのが、ふところの広さを感じさせて、お客さんを想像したり
しています。よく、物語のなかのお店を、実際の店名につけたりして
いるけれど、ここはなかなか、つけにくいでしょうね。

避難所といえば、これもBBSで推薦の、「レベル21」(さとうまきこ
著)の舞台、アンジュさんのマジカルショップ。このお店も、本当に
必要としている人しか入ってゆくことができないのですが、すてきな
小物がたくさんあって、しかも謎の美人、アンジュさんがいるのです。
マジカルショップ「レベル21」を体験した人は、人生のカーヴを曲っ
て、新しい世界に入ってゆくような、そんなお店でした。(マーズ)
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by wintersavory | 2005-11-05 20:53 | 本*

本のなかの、あのお店。(2)

● 霧の向こうには、お店がいっぱい。

先日書き込んでくださったなかには、「霧のむこうの不思議な町」
(柏葉幸子著)に出てくる「トケの店」がありました。この店は、あ
る意味、不思議の町全体を養っているようなお菓子やさんです。かつ
て高校時代に読んだとき、私は「ナータの店」という本屋さんがひい
きでしたが、おいしくていくら食べても太らない、でも虫歯になるの
は他のお菓子と同じ!というトケの店のことを思い出しました。そう
いえば、あの町には不思議なお店ばかりが集まった通りがあったんだ
っけ、となつかしいです。

主人公のリナが下宿する「ピコット屋敷」のピコットばあさんの信
条は、『働かざる者、食うべからず』。そこでリナは、あちこちのお
店でアルバイトしましたが、トケのお店では働きませんでした。ナー
タは、本を売ってもお代をもらいません。本との出会いを大切にして
くれる人にだけ、ナータの本は手渡されます。この町の住人は、魔法
とかかわりがあって、お金がなくても暮らしていけるらしいのですが、
それでも皆、きちんと毎日働いているのが面白いですね。(マーズ)
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by wintersavory | 2005-11-05 20:53 | 本*

本のなかの、あのお店。(1)

● 本のなかにある、思い出のお店。

児童書やミステリのなかには、作者の遊びごころがつまった、架空
のお店があれこれ登場しますよね。それはレストランだったり、アン
ティークショップだったり、ちょっと怖いお店だったり、面白いマス
ターがいるお店だったり。主人公にとって、そのお店は避難所だった
り、物語の鍵を秘めていたりするけれど、本を読みながらできあがっ
たイメージは、私たちのなかに、時には実在のお店よりも鮮やかな記
憶を結ぶようです。

世界的に有名といえば、エンデの「はてしない物語」冒頭で、いじ
められっ子のバスチアン少年がかけこみ、魔法のかかった本「はてし
ない物語」を手にするお店を思い出します。あれは古色蒼然とした古
本屋さんでした。ヨーロッパの古い通りには、ああいう雰囲気のお店
がいまもひっそりとたたずんでいて、リアリティがあるのでしょう。

サイトのBBSでこの話題が出たとき、「小公女セーラ」がパンを買
ったお店の人に会いたいという書き込みもありました。これは、セー
ラが拾った銀貨で、偶然見かけた貧しい少女のためにパンを買って
あげるエピソードだったようです。拾ったお金を使うことに抵抗の
ある、しかし明らかにお腹を空かせているセーラを見て、パン屋の
おかみさんや司祭様は、自分のために使いなさいとすすめます。

ところ変わって、「初ものがたり」(宮部みゆき著)の謎の稲荷寿
司屋さんの屋台、というのもあがっていました。こちらは、お江戸の
橋のたもとのオープンカフェで、店の親爺さんは、茂七親分と一緒に、
事件の謎を解くのだそうです。(マーズ)
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by wintersavory | 2005-11-05 20:52 | 本*