本のなかの、あのお店。(4)

● 何でも屋さんの誘惑。

何でも売っている何でも屋さん、しかも主は猫。そんなお店が
「ねこじゃら商店」(富安陽子著)です。白菊丸という猫が経営し
ているこの店は、神出鬼没。町のどこかの路地の奥、必要なものを
探しているお客さんの足が向いた方角に、開店しているのです。何
でもあるわりに、「在庫切れですので明日までには」などといって、
お客の無理難題に対応したりしています。さんざんな目にあうお客
も、ときにはいるのですが。探し物は、川に流した柳の枝だったり、
のっぺらぼうの顔だったりと、ねこじゃら商店は大忙し。

ファンタジックながらくた屋さんというと、「完全版風街物語」
(井辻朱美著)の「フィガロの店」、なかなか通好みです。本業は
標本屋のフィガロが、4週間でモササウルスの骨を探すあたり、ねこ
じゃら商店の白菊丸といい勝負かも。フィガロはタキシードを着込
んだ洒落者で、蝶ネクタイがときどきトンボになったりします。

本のなかにある店は、それにしても魅力的です。移転することも
閉店することもなく、一度知ってしまうと、一生もののお店もたく
さんあります。そんななかでも、何でも屋さんにあこがれるのは、
手品のようにあれこれを取り出してみせる主人へのあこがれでしょ
うか。そんながらくた屋さんの店の奥に座って、迷い多きお客人が
扉をあけるのを、日がな一日眺めているのは、なんとぜいたくな
ことでしょうか。(マーズ)
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by wintersavory | 2005-11-05 20:54 | 本*
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